先日「ボディスキャン瞑想」について質問がありましたので、少し詳しくご説明したいと思います。
「ボディスキャン瞑想」は、身体の様々な箇所に意識注いでいくためのトレーニングです。
この瞑想は単独でも大変効果の高いトレーニングなのですが、いまは「自律神経トレーニング」のためのウォーミングアップとして練習していただいています。
「ボディスキャン瞑想」を続けておこなうと、心と身体の結びつきが強くなり、集中力もある程度鍛えられるので、その後に行われるトレーニングのための心の準備運動のような、とてもよい役割を果たしてくれます。
質問された方は、わたしが「心の目」と表現しているものが、一体なんなのかわからなかったようです。
ボディスキャン瞑想の中に「心の目を右肩に注いでください」というフレーズがあるのですが、それは「意識を右肩に注いで観察する」ということを意味しています。
普段わたしたちは、目をあけて外側をみていますから、目をつぶって自分の身体内部を見るということには慣れていません。
実は、自分を観察するときのこの「心の目」は、外のものを観察するように簡単にはいかず、こうした練習を通して後天的に作り上げていくものでもあるのです。
目をつぶって、指示された身体の一部分、たとえば右肩を観察すると、もしかすると緊張して凝り固まっている様子が感じ取れるかもしれません。
「ああ、凝っているな〜」と、ありのままの状態を、そのまま観察すればいいだけなのですが、それだけでも身体は自然とそのコリをゆるめていこうとします。
自分でリラックスしようと努力しなくても、身体がその状態を知ると、より自然な状態へと自動的に動き出すのです。
これが身体のもっている英知なのです。
(蛇足ですが、人はリラックスしようと努力すればするほど緊張してしまうものです)
この身体の自発的な反応をそっと待つのが、この練習のコツでもあります。
わたしがその方にお伝えしたのは、たとえ肩が凝っていても、あるいは痛みがあったとしても、険しい表情で見たり、がっかりした表情で見ないように、ということでした。
そこに評価をはさまないこと、そして義務を押しつけない、ということがとても大切なのです。
たとえて言えば、天使のまなざしで見る、ということでしょうか。
この練習は、身体の一部がどのような状態であれ、ありのままを、無批判でそっと受け入れていくという練習でもあるのです。
大人になるまでに、人からさまざまな評価を下されている私たちは、自分を評価したり批判したりすることなく、ありのままをそっとあたたかく受けとめる、ということに慣れていないのかもしれません。
現在かかえている身体の不調が、そういった社会からの評価に対するストレスから生じたのだとすれば、
まずは不調を抱えた自分の身体を、天使のまなざしで見るだけでも大きな治癒への一歩となるでしょう。
私たちのために懸命に従い続け、黙々と働いてくれている細胞くんたちに、お疲れさま、どうもありがとうというメッセージをこめて、一日に数回、この単純な練習を行っていただければと思います。
はじめは、なかなか天使のまなざしで見ることができないかもしれません。
それでも、がっかりしたり自分を責めないようにしてくださいね。
指示にしたがってただ淡々と続けるだけでも、立派な集中力のトレーニングになり、雑念からの解放にもつながっていきます。
雑念から解放されれば、脳疲労が解消されていきます。
個人差はありますが、そうこうしていくうちにコツがつかめきます。
自律神経失調症は、たいてい身体と心の不調和からはじまり、ストレスからくる脳疲労にまで発展していきます。
このボディススキャン瞑想は、とてもシンプルな練習ですが、心の側が、言葉をもたない身体の細胞に寄り添い、労をねぎらい、コミュニケーションを始めるための大切なステップでもあるのです。
ボディスキャン瞑想を続けることで、身体にあらわれているコリや、心の緊張に気づきやすくなり、身体からのメッセージを受け取りやす体質に変わっていきます。
これに続く自律神経トレーニングの内容は「重感練習」という「脱力」に特化した練習です。
自律神経トレーニングのためのウォーミングアップとして、このボディスキャン瞑想を行っていただくのは、ご自分の心と身体をむすぶ「心の目」「天使のまなざし」を育てる、そして集中力を強化するという意味合いがあるのです。
音声データを何度も聞けば、順番も暗記してしまいますよね。
そうしたら、オフィスでも電車のなかでも、少し時間があるときに実行することもできるでしょう。
12月はどういうわけか毎年とても忙しいものですけれど、一年の感謝をこめて過ごせたらいいですね。
年末は、わたしも毎年ついつい働きすぎになってしまいます。
天使のような眼差しで自分自身をみつめ、ねぎらいの言葉をかけることができる、そんな心のゆとりをもちたいものですね。
寒い季節になりました。
皆様も、どうかご自愛ください。
それではまた。