2020年、新年を無事に迎えることができたことを心より感謝もうしあげます。
今年もどうぞよろしくお願いいたします。
新年が明けて、今年の抱負をかかげたり、初詣で神様にお願いごとをされたりして、心新たに新年を迎えられた方も多いと思います。
今回は、自分の望みを実現したいと思っておられる方たちのために、新年にふさわしいテーマ、
「日記セラピーの効用」についてお伝えしたいと思います。
今回は、毎日「メモをとる」ことを通して、自分の心の状態や行動を観察し、それをコントロールできるようにする絶好のツールとしての「日記」を考えていきたいと思います。
さて、新年の抱負として一般的に考えられるのは、仕事、健康、恋愛、家族のことなどですよね。
個人的なことではなく、もっと大きなテーマで、たとえば世界平和などの願いをもっていらっしゃる方もいるでしょう。願い事の大小関係なく、その内容をかなえるために「日記」ほど効果のある、お手頃なアイテムは他にありません。
初詣でお願いごとを神様にお願いして、たとえ神様がサポートしてくださったとしても、願い事の実現のために具体的なスタートを切るのは、実際には自分自身です。
願い事や夢というのは、それほど簡単ではないからこそ、そしてまだ完全に実現していないからこそ、願い事であり夢なのです。
日記の役割は、新年にわくわくしながら思い描いた大きな目標設定と、現実とのギャップを淡々と詰めて、最大限に近づけていくための理想的なツールとなります。
このギャップを少しずつ埋めていく日々の往還運動こそ、素敵な夢、どうしても達成させたい目標を実現するために欠かせない大切なプロセス。
そのプロセスを支えてくれるのが日記なのです。
それはそうと、日記を書くという行動が、なぜ「自律神経トレーニング」と関係あるの?と疑問をもたれる方もいらっしゃるかもしれませんね。
それは毎日、漠然と感じている「不安の解消」と深い関係があります。
苦手な領域、未知の領域には必ず「不安」が伴います。
この「漠然とした不安」「苦手意識」が「緊張」を生じさせ、それが慢性化すると「大きな不安」に成長していき、そのプロセスの中で自律神経のバランスが崩されていきます。
とくに心が弱っているときには「自分にはできないかも…」と思いこんでしまい、自分で自分を追い詰める傾向も強まってしまいがち。
そこで大きな不安を、小さなカケラに切り崩して、一つ一つ片づけていくわけです。
その作戦会議を、日記を書きながら行っていきます。
日記に書く目標は、大きな苦手を相手にするのではなく、いまの自分ができる「小さなこと」が適しているということになります。
もちろん、日記の1ページ目には大きな目標をド~ンとかかげてください。
そのために小さな壁を一つ一つ、ひょいひょいと超えていきます。
どんな小さなことでも、それを成し遂げるとワクワク感が出てきます。
よ~し、次の日もチャレンジしてみよう!という気持ちになります。
これがドーパミンの効果といわれているものですね。
小さな「できた!」でも喜びは喜びです。
ドーパミンはちゃんとでてくれます。
反対に、小さな不安を放置しておいて、それが次第に大きくなれば、自信喪失や恐怖へと姿を変えていき、そのプレッシャーで疲労が蓄積されていきます。ストレスホルモンが出てきてしまうからですね。
疲労は、あらゆる病気の症状を生む元凶です。
日記は、こうした悪循環、無意識のループを切り、良い流れをつくるためのツールでもあるわけです。
「できる領域」が増えることで徐々に「やる気」がでてきて「安心感」が増していくため、私たちの心を落ち着かせてくれる「副交感神経」が活性化されて、交感神経と副交感神経のバランスがとれていきます。
病状の回復に「自律神経のバランスを整える」ことはとても大切だということは皆さんもよくご存知ですよね。日記を書くことで不安をコントロールし、そのプロセスに日記が一役買うのはこうしたわけなのです。
数年前の話になりますが、引きこもり歴5年という方がおられました。お話を伺っていたら、その方に必要なのは自己管理だなと思い、日記セラピーをお勧めしました。
自分を管理することは、健康な方にも必要なことですが、特につらい症状に悩んでいる方の場合には体調管理にも役立つので、とても大切な要素になってきます。
日記に、自分が何をしたのか、どうして今日は何もできなかったのか(目標が大きすぎなかったかチェック)、では次の日は何をしたいのか、と細かく自分を観察していくと、自分ができること、できないこと、でもどうしてもやりたいこと、やらなくてはならないことなどがわかっていき、それに対する自分の心の動きも細かくわかってくるものです。
「自分を知る」ということは「自分を細かく観察する」ことから始まります。
引きこもりで悩んでいたその方の場合は「自分にはできない」という感情に強く支配されていましたので「今の状態でも簡単にできる」ことからメモしていただきました。
たとえば、トイレには難なく行けるとおっしゃっていたので、少なくとも家のなかでは自由に動けるということですよね。
そこで家の中でできることからスタート。テーブルの片付けから始めていただきました。次の週は本棚、次の週はCDラック、さらに台所…。
家のなかでの課題が数か月である程度満足できたところで、次は新聞をとりに外へ出る、というチャレンジがありました。どこまで足を運ぶことができたかを毎日メモしていただきました。
はじめ玄関先までだったのが、鍵を開けるところまでに変化し、靴をはき、そしてドアをあけ、最後に新聞をとるところまで実現するのに1週間を要しませんでした。
彼女の場合、新聞がたまるということが自分を落ち込ませ自信を失わせる、とおっしゃっていたので、そのグレーゾーンをスッキリさせるという目標を立てたわけですね。
朝夕、外に出るという習慣は引きこもりからの脱出も意味していましたが、実ははじめから引きこもり脱出を目標にはしませんでした。「外に出る」という課題は5年間失敗を繰り返してきた領域です。
もし彼女が「引きこもりを克服する」ということを、毎日の課題に掲げていたら、おそらく「そんなことできない」という気持ちが強くて、不安と恐怖でさらに症状は悪化したかもしれません。
「大きな苦手」を細かく分割すると、一つ一つが「ちょっとした苦手」にハードルが下がるわけです。
その方の場合は、その後行き先をさらに遠くへ設定していくことで、普通に外出できるようになっていきました。
大きな目標(この方の場合、引きこもり解消)を、小さな目標に分解して、この繰り替えしをノートに記していきました。日記と共に、次の小さな苦手領域を自分の「できる領域」にしていったわけです。
簡単にできることを積み重ねていけば、自分がそうありたいという方向へゆっくりと心と体は動いていきます。
急がば回れですね。
最後に、どのように日記を書いていくのかを、お話ししたいと思います。
何年かまえにスポーツ選手のトレーナーもなさっている小林弘幸先生が、自律神経のバランスを整えるために、日記がとても効果を発揮することをある本のなかで紹介してくださっています。(『「三行日記」を書くと、なぜ健康になれるのか?』)
この本のに書かれている3行の内容は次のとおり。
① イヤだったこと・失敗したこと(嫌だったことを書くと心のデトックスになる)
② 良かったこと・感動したこと
③ 明日やること(関心のあること・具体的な目標など)
とても簡単ですね。
嫌だったことは、そのあとでぐじゅぐじゅ反省したりしないことという注意書きがあります。特に寝る前、自分を責めない、反省しすぎない、ということはとても大切です。
寝る前に反省しすぎると、自分はまだ駄目だ、もっと頑張らなくては。。。と心が委縮することで交感神経がびりびりと刺激されてしまい、安心して眠りの世界に入ることができなくなってしまいますよね。
だからこそ、最後に「明日やる目標」というポジティブな目標に心を集中してからベッドに入るとよい、とその本には書かれています。
「自律神経のバランスを整える」ためには、具体的な計画を日々練っていくこと、その目標にむかって心を集中させ、他の情報に惑わされないことが大切です。
たとえば一流のスポーツ選手の場合、試合のあとに人からあれこれ批評されたり、褒められたりすることで、自分のペースを崩されてしまうということがありがちですよね。
私たちも同じですね。人の批判や賛美に動かされることで、心はとても不安定になります。それが自律神経失調症という症状を生む原因になっているわけです。
これは自分の立てたその日の目標から、心の焦点をずらさない訓練でもあります。
心を目標に「集中」するトレーニングは自律神経のバランスを整えるためにとても大切で、これこそ「自律訓練法」が目指すものでもあります。
そもそも現在の自分は、なんとなく無意識のうちに行っていた「習慣」によって作られた存在です。
集中力が身について、一週間にいくつか新しい行動を起こすことができるようになったら、先ほどの女性のように生活に少しずつ変化が起きていきますよね。
「習慣」が変われば、「生活」が変わり、最終的に「人生」も変わります。
人生は、日々の小さな行動から成り立っていることを意識していきましょう。
わたしが日記を始めたときには、まずは日記タイムを寝る前に5分とることを、当面の目標に掲げて習慣化しました。
新しい行動が「習慣」になるまでには、少なくとも3週間はかかると言われていわれているからです。
ノート一冊で始められる日記セラピー。
まずは半年の目標を立てて、さっそく今日から始めてみませんか?
今年も皆様にとって実り豊かな年となりますように!