「慈悲」と「自然治癒力」

先日、米国人医師でチベット僧でもある、バリー・カーズイン先生(Barry Kerzin M.D.)にお目にかかる機会に恵まれました。

バリー先生は、チベット仏教の僧侶であり、西洋医学の医師、ダライ・ラマ14世の主治医でもあります。

ドイツのマックス・プランク研究所において顧問もされていて、「瞑想と慈悲の訓練」についての長期的研究を任され、瞑想の科学的効果や応用事例を世界中の教育機関などで紹介されています。

今回の研究会テーマは「自然治癒力における意識変容について」でした。

バリー先生によれば、最新の慈悲の研究において、「慈悲」という感情と「免疫力」が深く関係していることがわかってきたそうです。

「慈悲」は、人間に備わっていつ仏性の1つであり、全員の中に初期設定としてある1つの性質だと先生はおっしゃいます。

この慈悲の感情が、最新のエピジェネシスティックの分野 (遺伝子と環境要因の関連を研究する分野) においては、驚くべきことに良質のタンパク質を作る力を持っていることまでわかっているそうです。

慈悲の心を育むことで、免疫力がアップするばかりでなく、良質のタンパク質まで作られるなんて、心と身体の関係性は、なんてミステリアスなのでしょう。

では、健康に深く作用する この慈悲の心を、私たちはどのようにして育むことができるのでしょうか。

慈悲の感情は、怒り、嫉妬、傲慢(プライド)などの否定的な感情と両立すことができません。

これらの否定的感情は、私たちを現実から引き離す力を持っているとバリー先生はおっしゃいます。

自分が抱いている否定的な内容に沿ったかたちで、現実を歪んで受けとめ、解釈することになってしまうからです。

これでは、色眼鏡で世界を見ているようなものです。

同じ犬を見て、可愛いと感じるか、それとも怖いと感じるか、人によって反応が異なるのも、同じような理由によります。

ですから、慈悲の心を育てるには、まずは否定的な感情の浄化が必要だということになりそうです。

バリー先生はチベット仏教の僧侶でもありますから、当然のことながら、否定的な感情を浄化する方法として、「瞑想」をすすめられています。

瞑想といっても、色々なタイプの瞑想がありますよね。

でも、どの瞑想も目的やそこへ至るプロセスは よく似ているんです。

私が皆さんにご紹介している自律神経トレーニング(「自律訓練法」や「ゆるぽか内観法」)も、実は東洋の瞑想法を土台として、応用、研究開発された心理療法です。

宗教性は排除されているものの、心を浄化し安定させながら、ストレスを自分でコントロールし、心身を調整していく心理・生理学的プロセスは、本場の瞑想法ととても似た道のりを辿ることがわかっています。

自律神経のトレーニングをしているうちに、雑念が自然に沸き起こってくるものですが、これを手放し、心に外に流していくこと自体が、心の浄化を意味しています。

雑念が途切れて、落ち着いた平和な状態がやってくると、心は澄んで晴れ渡った空のような状態になると言われています。

実際に練習を積んでいくうちに、これまで感じたことのない深い静寂を感じられるようになったと報告して来られる方も少なからずおられます。

その時に私たちにもともと備わっている仏性(優しい気持ちや、平和な心、落ち着いた慈悲の心)が、自動的に発動されてくるため、ある種の感動を味わう方もおられるようです。

たとえ1日に数分でも心が浄化されて気持ちが落ち着いてくると、自然治癒力が働き始め、生きる活力がチャージされていきます。

次の写真には、バリー先生のお言葉が書かれています。

少し小さくた見にくいかもしれないので、改めて下に書きますね。

あなた自身に親切でいましょう。
あなたにはその価値があるのです。
他者を愛することは、
まず「ホーム」つまり自分を愛することから始まります。
心の中の宝石は、磨けばいつでも輝きを取り戻せるのです。
自分にやさしくし、休ませてあげましょう。

(2019年8月のカレンダーより)

毎日2〜3回 自律神経トレーニングを実行することは、自分の心や身体の様子を丁寧に観察して、休息状態を作る習慣を身につけることでもあり、

それは同時に、それ自体が「慈悲の訓練」をしていることにもなります。

どうしてかといえば、バリー先生のお言葉の通り

慈悲も愛することも、まずは自分自身を大切にすることから始まるからです。

自分の心と身体の、隠れた疲れにも気づいてあげてください。

これから暑い日が続きますが、自律神経トレーニングをしながら、ご自愛くださいね。